穏やかな表情の芹沢は、沖田の頭をそっと撫でる。山南が言っていたような、派手なところはどこにも見当たらないのだが。


「はい! あ、いいえ……。
新しく入隊した人がいます」


「ん、どいつだ?」


無言で沖田の視線に促された光は、一歩進み出て膝を付き、頭を下げた。丁寧で優雅な所作に誰もが目を奪われる。


「監察方、副長助勤の井岡光と申します」


「……入隊早々、2つの役職につくとは……余程腕が立つのか?」


何かを見透かすように、あるいは値踏みするように目を細める芹沢。


(……嫌な眼だ)


不快感を感じた光が、何か言葉を紡ごうとする前に、芹沢は懐から取り出した鉄扇で光に襲いかかる。


誰も声を上げる暇などなく、誰も止める暇もなく――鉄扇は光の無防備な首へと、今まさに振り下ろされた。


「――いきなり、何のつもりだ」

「…………!」


だが、鉄扇の先には最早誰もいなかった。