新撰組のヒミツ 壱

光はどう断ろうか……、と考えあぐねていたが、グイッと腕を強く掴む青年の笑顔を見て、早々に抵抗を諦めた。


(……悪いことはしてない筈なんだけどな……。何でこんなことになるんだか)


まるで罪人を連行するような扱いに、事情を知らない人たちが、奇異と好奇の視線で見つめてくる。


中に混じっている嫌悪感は、壬生浪士組に向けられるものだと信じたかった。


「あのっ……お侍さま!」


背後から聞こえた、先程助けた少女の声。光はゆっくりと緩慢な動きで振り返った。


「わたしは今田初と申します。先ほどは、助けて頂いてありがとうございました! ぜひ、お礼をさせてください」


「私は井岡光です。大事にしてしまい、済まない。どうか気にしないでください」


深く頭を下げる初に、光は出来るだけ優しく善人ぶった微笑みを浮かべて見せた。