「……押そうか?」
少し勇気を出してそう言うと、杉本は振り返り、
「あ、助かる」
と言って、昔と同じようにふんわりと笑った。
車椅子を押しながら杉本の後姿を眺めているうちに、学ラン姿で歩いている彼が重なって見えて、時間が一気に巻き戻ったような気がした。
高校時代となんら変わっていない杉本に少し拍子抜けしたと同時に、ほっとした。
しかし、ここまで飄々としていられるようになるまでどれだけの紆余曲折があったのだろうと思うと、ただただ尊敬するだけだった。
いつか、杉本が言っていた。
神様に願い事をするなら、『どんなことにも耐えられる忍耐力』が欲しいと。
杉本は、神様にお願いしなくても、逃げも隠れもせず自分の力で耐えて乗り越えてきたんだ。

