まずい。 そう思った瞬間、足が勝手に動いていた。 杉本の母親を置き去りにし、春野を追いかけた。 「春野ちゃん!!」 全力で逃げる春野の肩に手を伸ばし、ぎゅっと掴む。 「離して!」 振りきろうとする春野を力ずくで押さえ、衝動的に抱きしめてしまった。 「落ち着けよ!」 ぐっと腕に力を入れる。 「離して!」 春野は俺の腕の中でじたばたと暴れる。 気の利いた言葉が見つからなくて、俺はただ春野を強く抱きしめた。