二人同時に扉の方を見ると、病室から出てきたのは、憔悴しきった女性だった。 その人が杉本の母親であることは、直感的にわかった。 疲れきっているその表情の中にも、品を感じた。 おそらく普段は上品な人なのだろう。 杉本の母親は俺を一瞥して、春野が持っているひまわりの花束を力なく見つめた。 「……もう、ここへは来ないでちょうだい」 杉本の母親は、ひまわりの花束を見据えたまま、呪文を唱えるように抑揚のない声で呟いた。 「……え?」 春野は顔を上げて、杉本の母親をまっすぐ見た。