春野が全速力で漕ぐ自転車の隣りを必死で走る。 水面の輝きも風の匂いも、全部振り払って走る。 そして、タッチの差で春野の自転車が先にゴールした。 「やった!わたしの勝ち!」 春野は満面の笑みで、はしゃいでいる。 「そんなの、勝てるわけねぇだろ。春野ちゃん、自転車だもん」 俺は立ち止まって肩で息をした。 すると、少し遅れて杉本が俺たちを追いかけてきた。