その時、頭の上から「大野くん」と呼ぶ声がした。 俺は机に突っ伏したまま、片目だけ開けてじろりと見上げると、いつもどおりやわらかい笑みを浮かべた杉本が俺を見下ろしていた。 一瞬心臓がきゅっと小さくなったが、何食わぬ顔をして、 「なんだ?」 とぶっきらぼうに答えた。 「今度の体育祭なんだけどさ。200メートル走のクラス代表、やってくれない?」 「俺が?」 面倒くさそうに答えると、杉本は「そう、大野くんが」とにっこり笑った。