「行くぞ」 そう言って勢いよく漕ぎ始めると、春野が俺の学ランをきゅっと掴んだのがわかった。 背中に感じる春野の体温。 切っていく緑の風。 流れていく景色がきらきらと眩く感じた。 「気持ちいい!」 俺の背中で春野が叫んだ。 「しっかり掴まってな」 俺がスピードを上げると、春野は子供のようにはしゃいで喜んだ。 それが俺には嬉しかった。 二人ではしゃぎながら川原への道を走っていく。 すると、前から自転車に乗った青年がこちらに向かって走ってきていた。