「どうした?」 俺の問いに、春野は静かに首を横に振りながら苦笑するだけだった。 そして、またひとつ、大きなた息をつくと。 「言っちゃおうかなぁ」 とぼんやりと外を眺めながら呟いた。 「ん?」 ちらりと春野を見た。 春野の瞳は少し物憂げだった。 俺は黙ったまま次の言葉を待った。 「実はね。逆なんだ」 「え?」 春野は歩道を行き交う人たちを目で追っている。