「隣り、いい?」
首を少し傾げながら、俺の隣りのカウンター席を指差す。
「ああ」
春野の目をまともに見られないまま答えると、彼女は隣りの席にカバンを置いてレジに向かった。
突然の出来事に少し動揺してしまった俺は、レジで注文している春野をちらりと見ては、隣りの椅子に置いていったカバンに目をやったりと、少し落ち着かなかった。
春野のカバンには、かわいらしいクマのキーホルダーがついていた。
それを見ながら、「なんかかわいいかも」なんてことを考えていると、トレイを持った春野が、
「何かおかしい?」
と顔をのぞき込んできたので、
「あ、ああ、いや、別に」
と、慌てて視線を窓の外に戻した。