なのに。
杉本の母親の言葉がふいに浮かんだ。
杉本は、自分の母親が、まさかあんなことを言ったなんて知る由もないだろう。
「……お前のせいじゃないよ」
ぽつりと呟いた。
「なんで?」
「いや。……そんなに自分を責めるなよ」
口が裂けても言えない。
俺はグラスの水を一気に飲んだ。
「なあ、杉本」
「ん?」
「お前、いつ知ったんだ?春野のこと」
すると杉本は目を伏せ、ふぅと大きく息を吐いた。
「入院中だった。看護師さんが教えてくれた」
「……そうか」
「うん」
沈黙が流れる。
俺は意を決して、深呼吸をひとつした。

