【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~


ピーッ!


ゲーム開始のホイッスルが響き、


再開されたバレーの試合を、見るともなしにぼんやりと見ていた優花は、隣に腰を下ろした人の気配に、ハッと顔を向けた。


「玲子ちゃん……」


「はい、スポーツドリンク」


「え?」


わざわざ、学食まで行って、買ってきてくれたの?


でも、流石に授業中に、ジュースを飲むわけには……。


ぽん、と手渡されたペットボトル入りのスポーツ飲料と親友の顔を、交互に見比べる。


「先生の許可はとってあるから、心配しないで飲みなよ」


『優花の考えなどお見通し』、


そんな笑みを浮かべる玲子の顔を見ていたら、夢の中で逢った、栗色の髪の玲子のことを思い出してしまった。


目の前にいるのは、黒髪の玲子。


そう、こっちが本物。


今が、現実なんだ。