【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~


『診察』と言いっても、聴診器を胸に当てたりする訳ではなく、ベッド自体に診察機器が組み込まれているらしく、

優花は、ただ横になっているだけで済んでしまった。


これで、診察ができてしまうというのは、自分が居た世界よりも、かなり医療技術が進んでいる証拠で、おそらく、そのおかげで命拾いをしたのだろうと、優花は思った。


あっと言う間の診察の後、


「うん。体じたいは、ほぼ完治しているね」


との、鈴木博士のお墨付きを貰うことができた。


ただ、三週間の間寝たきりだったので、体力と筋力が落ちていて、しばらく休養とリハビリが必要だとも言われた。


三週間。


――全然、実感がわかないや。


「それで、手が思うように動かなかったんだ……」


思わず、肩の力が抜けてしまった。


もしもこのまま、体が元に戻らなかったらどうしようかと思った。


「まあ、せいぜい地道にリハビリを頑張るんだな、優花」