【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~



「……やはり、四肢の運動能力の回復には、リハビリに時間がかかりそうかな?」


手足にうまく力が入らないのを見て取ったのか、博士が思案気にそう言うと、なぜか晃一郎が、「はい、特に右手足が弱いですね」と、又も真面目くさった表情で答える。


右手足が弱い?


どうして晃ちゃんが、そんなことを知っているの?


浮かんできたのは、さっきのセクハラ行動。


――もしかして、あれで、気付いたのだろうか?


でも私自身は、ただ手がうまく上がらないだけしか感じなかったけど?


チラリと、博士の傍らに立つ晃一郎へと首を動かして視線を走らせると、やはり至極真面目な表情を浮かべている。


さっきまでのセクハラ大魔王と、今の晃一郎の、あまりのギャップの大きさに戸惑っていると、博士から声がかった。


「優花ちゃん、三十秒ほどですむから、体を楽にしてそのままでいて下さい」


「は、はい!」


視線を戻して、横たわったまま少し緊張気味で頷くと、博士はベッドヘッドに備え付けられた小型のキーボード状の端末を、軽やかに操作した。