【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~



痛い、なんて生易しい言葉じゃ追いつかないっ。


知らない!


こんな、全身を突き抜けるような激痛を、


私は知らない!!


特に右半身、


右側頭部、右肩、右腕、右足に、


まるで鋭い刃物で切り付けられているような、激しい痛みが走った。


瞼の向こうに光を感じても、開けることができない瞳から、とめどなく涙が溢れて頬を伝い落ちる。


ドクン、ドクンと、


心臓が脈打つごとに増していく激痛から逃れようと体をよじるけれど、


拘束されているのか、ピクリとも動けず、全身を走り抜ける痛みにただ身もだえするしかできない。


「うぁっ、ううっ!」


「博士、何とかならないんですか!?」


ほとんど叫び声に近い、晃一郎の切迫した声が響く。


「今、鎮痛作用のある薬は使えない。脳が痛みを認識することが、この薬が働き始めるスイッチになるんだ。薬自体に痛みの元を探知させて、傷ついた個々の細胞を再生するためには、どうしても必要なことなんだ」