【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~


如月家は三年前に両親が交通事故で亡くなってから、優花と祖父母の三人家族。


だから、朝にシャワーを使うとしたら優花しかいない。


なのに、


目の前には、今まさにシャワーを浴び終えて『お着換え中』の先客がいた。


目が覚めるような金色の頭髪を、タオルでガシガシ拭き取っているその人物の均整の取れたしなやかな肢体からは、ホカホカと湯気が上がっていて、


右耳につけられた、幅一センチ程の銀色のクリップ式イヤリング、イヤーカーフが、水を弾いてキラリと鋭い光を放っている。


「ん? ああ、おはよう。シャワー使うのか?」


「……」


ダルマさんが転んだ状態のまま硬直している優花に、ニコやかに声をかけた人物こそ、


何を隠そう噂の幼なじみ、


『御堂晃一郎』、その人だった。