【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~


優花がこの夢の話をした時に玲子は、絶好の小説ネタの提供とばかりに、眼鏡の奥の瞳をキラリと輝かせて、


『夢は願望の現れだっていうよ。

それは、優花が好きな男の子と手に手を取って逃げたい、

つまり、『駆け落ちしたい』って心の何処かで思っているからじゃない? 

ついでに言えば、何かに追われたいM願望の発露! 

優花って、絶対Mっ気あるよねー』


と、ニコやかにのたまわった。


――まあ、M願望は無視しておくとして、


だとすれば、私は『晃ちゃんと駆け落ちしたい願望』があるってこと?


んなバカな。


確かに好きだけど、


それは、例えば『お兄ちゃん』が居たらこんな感じだろうって言う、言わば肉親への情に近い。


そう、家族よ家族っ。


だって、いつまでオネショしてたとかまで知ってる仲なのよ?


けっして、手を繋ぎたいとか、


まして、


キ、キ、キスしたいとか思っているわけじゃなくっ!――