「御父さん!」

「う~~~ん。此処は?」

「良かった!病院ですよ」

 文也が目を覚まして安心する拓哉

「俺はいったい?」

「お墓の前で急に倒れたから病院に搬送されたんですよ」

「そうか。例の夢を見たよ」

「そうですか」

「前に進まなきゃいけないのにな」

「ええ」

「いつかは俺もエイズで死ぬんだよな。そしたら裕美と冬実に会えるな」

「縁起でもない事言わないでくださいよ」

「ごめんごめん。兎に角前に進もう」

「ええ。僕もいつかエイズで死ぬんですね」

「ああ。辛いけどな。そしたら拓美は一人になるな」

「拓美が一人で生活できるようになるまでは何が何でも死にませんよ!」

 強く文也に言う拓哉

「よく言ったな。拓美にはお前しか居ないんだ。しっかり面倒見ろよ」

「ええ!」

それから1ヶ月して御父さんは死んだ。
僕は泣いた。泣いて泣いて泣いた。
でも約束を胸に強く生きることを誓った。
御父さんが死んだ日は偶然にも御母さんと
冬実と同じ日だった。御母さんの御母さんが
一緒に住もうと言ってくれた。
もうすぐ60歳なのに。嬉しかった。
でも断った

「御父さんが死んで今年で一年ですね。皆のお墓参りに来ましたよ」

 お墓の前で言う拓哉
 
「じーじ。ばーば。マァマァ。ちゃい」

「拓美が1歳になりました。近くの保育園に通ってますよ」

「来てくれてありがとう。嬉しいよ。こっちは元気にやってるよ」
  
「2人とも元気そうだね。良かった」

「御父さん!?冬実!?来てくれたんだ。ありがとう」

 二人の声が突然聞こえて泣き出す拓哉