ざりっと畳の草が鳴る。
僅かに動かした後に、渉は間に手を入れて、出した。
立ち上がり、未だ廊下にいる好美に、渉は手のひらを差し出す。
「……、碁石?」
好美の日常とは無縁のため、一瞬、名前を忘れたが、渉が手のひらに乗せていたのは白い碁石だった。
「囲碁盤の下にありました。まさかと思いますが、これを見間違えたのではないのですか?」
「えっと……」
“真白いだけの眼球”は言い換えれば、“白いだけのモノ”でしかない。
黒の中に白ははえる。隙間の影でぼんやりとしか見えずとも。
「碁石って……」
いや、まさかと好美自身呆れる以前に混乱さえ覚えた。


