春夏秋冬渉。
漢字にしてみれば字面悪いが、春夏秋冬(一年)を渉(わたる)者と考えれば、ずいぶんと意味が籠った名前に見えた。
柏木好美と特に名字と名前に繋がりない自分とは違って、渉の“存在表明”はそれだけで“形”を持っている気がした。
――親はいないのかな。
繋ぎに、そんな名前をつけた渉の親について考える。
歳としてはもう一人でもいい時期だが、こんな辺境に一人暮らしをさせるのはどうかと思う。
いや、もしかしたら渉自身がこちらに来たいと言ったのか。
好美の知ることはなく、また別の言葉でも検索しようとしたが。
「……」
居間を改めて眺める。
こうもしたのは、背中にざわつきを感じたからだ。胸でもいいが、背後に這うような“視線”は背中の温度を下げるようだった。


