どこから鳴ったか分からず、好美は振り返った。しかし、何もない。あったのは回る風車だけ。
――気のせい?
鈴の音は遠くにいった。
もはや過ぎ去った音が本物かどうか確かめる術はない。
玄関先は狭く。右手側に靴箱があった。その上には、赤べことこけしが置いてあった。
赤べこは東北の名産だ。東北地方たるここではさして珍しくないが、分からない人に説明すれば、赤い牛の置き物である。
首部分の繋がりをわざと甘くして、頭にちょこんと触れれば、かくかくと頭だけを揺らす仕組みになっている。
こけしに関しては言うまでもなく。ポピュラーな一代物にすぎない。
「こちらへ」
「い、いま行く」
フローリングとは言えない干からびたような木の廊下を進めば、居間に通された。


