「行きますよ」
「あ……、うん」
かかしになった好美に呼びかけるなり、渉は先に行く。
あちこちを見るが、視界には必ず風車が目に入る。
幻想的と言えばそうだが、だとすれば人がいていい場所にも見えなかった。
神社めいた家の正面からではなく、勝手口のような小さな扉を渉は開けた。年期が入っているらしく、ぎしぎしと大げさに音を鳴らす。
「ただいま帰りました」
一人暮らしと言っていたはずが、入るなり、靴を脱ぐ前に渉は言ったのだ。
中から誰も返す人はいない。
「お、お邪魔します……」
自分の耳にしか聞こえないような挨拶をし、家に一歩足を踏み入れた好美だったが。
――、リン。
と、水面に広がる波紋のようなよく続く鈴の音がした。


