近づくにつれて、それの正体がはっきりしてきた。
人が階段に座っていた。
人間と分かったからか好美の視線はより、アレ寄りになるが、薄気味悪さは消えない。
黒いボロ布を頭からすっぽり被り、背を丸めて繭籠りのようにじっと動かない。
――なにしてんだろう。
暗い中でじっとして、寒くないだろうかなどと変なことを考える。
あともう少しですれ違うといったところか。
「……め……め、……の……は」
風に撫でられた笹の葉のような、小さな声が聞こえてきた。
「い……い……る」
気のせいかと思うほど小さい声。アレが喋っていると知るには、だいぶ時間がかかった。
「……け……に、……べ……」
――歌?


