「メリーさんから電話があったんですね」
大げさすぎるほど、好美は頷いた。
「口裂け女に続いて、メリーさんとは……なんとまあ、“今日はそんな夜”なんですね」
指先で学生帽のツバを撫でながら、呆れたように、もしくは諦めたように渉はなんとも言えない表情をしていた。
「わた、し……、どうしたら……っ」
「あなたが今、ここにいること自体がもう、“助かった証”ですよ。好美さん」
渉が名乗ったさいに、好美も名前は言っていたが、初めて呼ばれた。
助かった証よりも、好美さんという響きが余韻を引く。
それに知らず、渉は続ける。
「口裂け女とメリーさんは都市伝説王道ジャンルであっても、対処法が知れ渡る口裂け女と違い、メリーさんに関しては案外知らない人が多い。
これは“言わずとも分かるだろう”というのがあり、火が前にあって火傷しない対処法を考えるのと同等で――まあ、あなたが常識的に考えてやったのは当たりなんですよね」


