「犬が来ますよ」
それは――前触れもない宣告だった。
曲がり角を曲がった時に、好美はぶつかった。
感触からして人間。柔らかくもなく固くもない曖昧な体に好美はぶつかり、止まった。
そうして、それは言うのだ。
「犬が来ますよ」
と――。
振り返るのも嫌だったが、自分を追っていた恐怖がどうなっているのを確認するため、好美は見た。
「ひっ……」
見て後悔し、逃げようとしたが、自分を抱く手があり逃げられなかった。
「犬が来ますよ」
しつこくそればかり言って、好美を抱くのは少年だった。
夜に相応しいように黒い格好。
学生帽子を被り、黒いマントを羽織った――なんともレトロを行き過ぎた姿の少年である。


