女は変わらず俯いていた。付き合わずに帰ろうとした矢先。
「私、きれい?」
悪寒が走った。
ただ肝心の足は走らない。
どきどきと早鳴る鼓動は、自分がどれだけ畏怖しているかを暗示しているのに、足が縫い付けられたように動かなかった。
動けと命令が出ない、危ない危ない危ないとただ脳は危険だと言うだけだった。
まともに考えれば、いたずらなんだろうと思えた、ふざけているだけと無視できた。だが、それら一切がなくなるほど女は“酷似”していたのだ。
恐らくは、口裂け女と聞いてほとんどの人がイメージするであろう姿。
「私、きれい?」
見せびらかすように、焦らすように、ゆっくりと顔をあげた女は――マスクに手をかけた。


