口裂け女だなんて、あまりにもふざけた都市伝説だろう。
噂としてはもう死語の域に入るほど、“過ぎ去った流行”に違いない。
インフルエンザ対策でマスクする人なんて珍しくはなかった。
女もまた、そんなことでしかないと好美が外灯に差し掛かった時に。
「――、ねえ」
琴線に触れたような、ぽつんとした声が耳に入った。
どきっとしたのは言うまでもない。つい足を止めてしまい、女の方を見た。
声を出したのは女だ。声をかけてきたのはこの人だ。
「な、なんですか」
知らない人に話しかけられてもついていってはいけないとあるが、あれは幼少期限定であり、そういうのも幼少期は何かと“自分より強い輩”が多いという理由からだ。


