「あなたは“見えないモノに怯えて”いる」
今までの話の形そのものに好美はなっていた。
口裂け女、メリーさんに至っても、“そんなのがある”と知っている人は少なからず怯えるものだ。会うのではないか、と。
一時期、口裂け女がブームで小学生がべっこう飴を持参して通学する事態もあり、それが新聞に載ったこともあるほどだ。
広まった都市伝説が、怪異に会わない子たちまで“いるんだ”と確信を持たせ、不安を煽る。
いるんだと確信すれば、夜道がよりいっそう怖くなり、ただの影を人と思い込むことだろう。
湯船に浮かんだ“輪郭がない顔”もそれに当てはまる。
「この家は“一番安全な場所”という言葉よりも、あなたはそちらの都市伝説を信じ込んだ。……まあ、口裂け女を見たあとでは、そう思うのも仕方がありませんが」


