「ただの本を、読めば呪われる本だと渡せば読むのをためらう。知ったからには人間は、その事柄に“境界”を置くんですよ。
あなたがやった行為は“境界を超えたこと”。ただその後に“必ずしも”がつくわけがありませんが、何かあるという見えない不安はぬぐえない。
呪術の類いなんですよ、これは。昔ながらのね。『紫の鏡』と聞いて、20歳までに忘れなきゃ結婚できないなり死ぬなり、それを呪い言葉として受け止めるのもまた然りです」
好美にしてみれば、その言葉にはぎょっとした。
紫の鏡も都市伝説だ。20歳までに覚えていれば、と良くないことが起こるらしい。
前に聞いて忘れていたのに、ここでその禁句を聞けば、嫌な気持ちしかでない。
気持ちが顔に出たか、ほらまた、と渉は口ずさむ。


