「実は私、」 榊がスミレを抱いたまま駆け出す。 足で強く地面を蹴ると、二人はフワリと宙に浮いた。 後にした灰色の屋敷が見る見る遠ざかっていき、二人は輝く青空に包まれていく。 二人を運ぶ風の中、榊はスミレの耳元で囁いた。 「実は私、ピーターパンなのですよ」 (『ネバーランドに、行きませんか』:完)