車窓が緑色に変わると、恵一はネクタイを緩めた。 都心を出発してから、かれこれ2時間。 平日の昼下がり、各駅停車のこの便に始発から乗り続けているのは、彼ぐらいなものだ。急行の停車駅でたまに乗り降りがあるだけの車内は静かで、恵一は一人、ボックス席を占領して思索にふけることができた。 時間がなければ、もちろん急行を使ったほうが早く着く。 あそこは不便な場所だから、本当は車で来たほうが効率的だ。 分かってはいても、鈍行のこの電車に乗らなければ、あの場所にはたどり着かない。 そんな気がして。