……誰だ?
 こんな時間に電話してくる奴は。

 俺は携帯のディスプレイに映る文字を見た。


 慎だ。

 俺は通話ボタンを押して、携帯を耳に当てた。

「も」

『――しもし!』

 俺が「もしもし」と言おうとした瞬間、慎の声が聞こえてきた。

『何で学校来ないの?』

 やっぱりその話か。

「頭痛い」

 適当な嘘を付いた。

『嘘』

「嘘じゃないし……」 

 嘘だけど。

『嘘だよ』

 こいつ――
 “嘘でしょ?”とか
 “嘘だろ?”とかじゃなくて
 まるで知っているように、
 自分の事のように言うな。

『椿と何年一緒に居たと思ってんの』

「保育園の頃から」

 そうだ。
 慎とは保育園に入った時からずっと一緒だ。
 友達の中で一番長い付き合いだ。
 京介は小学2、3年生の頃からだし、千秋と付き合い始めたのは中学からだ。

『千秋でしょ。原因は』

 そんな直球で言うなよ。

『……来なよ』

「嫌だ」


『じゃあ俺が来るから』

「は?」

『………………』 

「おい、慎?」

 その時、部屋のドアが開いた。