「きょ……京介!?」

『長い爪……私に……!! 京介がっ!!』

 思考が追い付かない。
 京介が――長い爪?


 鬼――――?


『助けっ……きゃああっ!!!』

 千秋は後ろを振り返って叫んだ。

『京介……なんで……? やめて……』

 千秋は何かに怯えている。
 ――何に? 京介に?
 俺には何も見えない。
 千秋の目には、一体何が映っているんだ??

『いやあっ!!』

「千秋ッ!?!?」

 その時、急に千秋がしていたネックレスが千切れ落ちた。
 いや、千切れ落ちたんじゃない――千切れ落とされたんだ、きっと。

 誰に?
 京介に?
 京介はそんな事しない。
 じゃあ何故千秋は京介を呼ぶ?

 俺の頭は今にもフリーズしてしまいそうだった。
 何故? 何故?
 疑問ばかりが浮かぶけど、答えは1つも浮かんでこない。

 俺は千秋を守るように、強く抱き締めた。
 千秋の体は震えている。


 その時だった。
 千秋の体中から赤色が吹き出たのは。
 それが血だと気付くまで、そう時間はかからなかった。
 生温い鮮血が、俺の体に飛び散る。

 しっかりと抱き締めていた千秋が、空気になった。
 抱き締めていた感触が消えた。

 千秋が――――消えた。