『普通の鬼ごっこは、鬼と逃げる人が居て、鬼が逃げる人を追い掛けるっすよね』

『そうですねえ』

『一人鬼ごっこも同じなんす――鬼は、行方不明者。逃げる人は次の標的っす』

 俺はその言葉に引っ掛かるものを感じた。

『鬼は逃げる人にしか見えないみたいっす。そして鬼が逃げる人を捕まえたら、今度は逃げる人が鬼っす』

『……あの、ちょっとよろしいですか?』

 アナウンサーがおずおずと言った。

『なんすか?』

『鬼が逃げる人を捕まえたら、鬼はどうなるのでしょうか?』

 それ丁度、俺も気になっていた。

『そういえば、そうねぇ……』

 気付くと隣で母親がテレビをじっと見ていた。

『あぁ、生まれ変わるんす』

『え?』

『鬼は、生まれ変わりたいから標的を追い掛け続けるんす』

 成る程……。
 人の心の醜さが分かるな。

『標的ってのは、逃げる人が最期に会った人――もしくは目が合った人っす』

 ふむふむ……それは前からテレビで言ってたな。

 その時、俺はある事に気付いた。

「それじゃあ……」

 この話の通りなら

「嘘だろ……」

 京介は
 実の母親に追い掛けられたのか?
 そして、実の母親に――

「――ひでぇよ」

 これじゃあ、あんまりだ。