うとうとする私をよそに、


「男がみんなみんな見境のない生き物だと思ったら、それは東子さんの思い込みにすぎないよ」


とハルは語り続ける。


「……ハル」


私は微睡の中を行ったり来たりしながら、ハルのスウェットの裾をくん、と引っ張った。


「ごめんなさい。続きはまた明日にしない?」


眠いの、私が言うと、ハルが顔を寄せて来た。


「え、ちょっと。本当にこんな場所で眠るの?」


「本当に眠くて」


重い瞼を懸命にこじ開けようとする私を、子供みたいだね、とハルは優しく笑い飛ばした。


今日は本当に色々な事があり過ぎた。


疲れてしまった。


「ごめんなさい、ハル」


もう少しハルと話したいのだけれど、眠りたくてどうにもならなかった。


「いいよ、分かった。眠って、東子さん」


ハルの手のひらが降りて来て、私の重い瞼を撫でる。


「Buona notte」


あ。


また、だ。


ハルがまた、不思議な言葉を言った。


英語ではないし、中国語でもなければ韓国語でもない。


私はハルの肩に体重をかけ、目を閉じたまま聞いた。


「それ、どこの言葉なの? 意味は?」


ふわふわ、体が宙に浮かんでいるような気分だ。


とても、心地がいい。


ハルの声と、その変わったアクセントの言葉が、なぜだか。


「おやすみ、いい夢をみて」


私の耳に、ハルの吐息がかかる。


「そういう意味」


「……そうなの」


それは、ハルの声質のせいなのか、聞いた事のない言葉のせいなのかは、分からないけれど。