「僕たちに終わりが来る時。それは君が僕に愛想を尽かした時……あるいは、もうひとりの僕に恐怖を抱いた時だろう」


「……煌」


「そして、もうひとつ。それは……僕が過去を捨てて、全てを真実の愛に――」


言いかけた煌の言葉を遮るように、私は煌の唇を塞いだ。


唇を離して、もう一度、煌を抱きしめる。


「もう、眠りましょう」


煌は子供のようにコクと頷いた。


しばらくすると、静かな寝息が聞こえて来て、煌は深い眠りに堕ちていった様子だった。


その夜は本当に静かで、まるで別世界にトリップしてしまったような、不思議な時間だった。


私は寝息を立てる煌を起こさぬように細心の注意を払いながら抱き締めて、誓った。


この人の全てを、ありのまま受け止めようと。


この人が10年抱え続けてきた、背負ってきた孤独を。


今度は私が抱えて背負って行こう。


そして、そうできる自信が私にはあった。


どこからその自信が生まれたのかなど説明できないけれど、その勇気と自信が、その時の私にはあったのだ。


この人を、もうこれ以上孤独にはしない。


この時は、そう思っていた。