この秋が散って、冬が溶けて、春が芽吹いて。


私は日本に帰る。


そして、遠距離恋愛が始まって。


絶対にケンカやすれ違いがあって。


きっと、私も煌も疲れて。


いつしか、お互いの気持ちが徐々に離れて。


「いつか……私も、煌の中から排除されたりする日が来るのかしら」


煌がさらいに来てくれる前に。


この人の中から、排除されてしまう日が来るのかもしれない。


「呆れたな。恋人になれた日に、そんな事言うなんて」


クスクス、煌の吐息が頬を撫でる。


「だって」


「大丈夫だよ」


その心配なら要らない、と煌は私をしっかり抱き止めながら言った。


「僕は憶病だから」


僕は、君を排除する事はできない。


もし。


僕たちが終わりを迎える日が来るとしたら。


それは絶対に僕からではなくて、君からだと思うから。


「終止符を打つのは僕じゃなくて、君だろうね、華穂」


「どうしてそんな事を言うの?」


煌の胸をほんの少し押し返して顔を上げて、私は言葉を呑み込んだ。


私の胸は張り裂けんばかりに悲鳴を上げた。


「僕が、臆病者だからだよ」


そう言ってにわかに微笑んだ煌は、今にもふいっと消えてしまいそうで。


そして、泣きたいのを必死に我慢しているような目だった。


涙を堪えているのではなく、辛抱しているのではなく。


明らかに、我慢している。


「煌、大丈夫よ。あなたは排除されたりしていないわ。お母様は、あなたを排除してなどいない」


だから、煌が消えてしまわないように、泣いてしまわないように。


これ以上、孤独を感じないように、孤独を背負わずに済むように。


「あなたのお母様の心の中に、ちゃんと煌は居るわ」


今度は私が煌をきつくきつく抱きしめた。


私の胸元に頬を寄せて、煌は蚊が鳴くような声で言った。