元々は天使であったのに、神とその座の高さを競い、驕慢の故に天上を追われた。
あるいは、主なる神の被造物でありながら高慢や嫉妬がために神に反逆し、罰せられて天界を追放された天使。
堕天使。
彼は自らのその手を汚し、汚れたその手で自らの首を絞める、堕天使。
私には、そんなふうに見えた。
彼がどんどん変わっていくのを、私は見ていられなかった。
生きる事にさえ恨みつらみを抱いているような、そういう凍てついた目つきをするようになっていく彼を見ていられなかった。
「ねえ、華穂。君も僕を憐れだと思うかい」
己の手で己の心を切り刻んで、わざと傷を負って生きているようにしか思えなかった。
それでも。
例え、世界中を敵に回したとしても。
「……どうして、自分で自分を傷付けないと生きて行けないの……煌」
それでも。
わたしにとって、彼は、宇宙にたったひとりのかけがえのない、煌めきだった。
鷹司 煌。
彼と出逢ったのは、今から7年前の夏だった。
高校を卒業したその年の4月に、私は憧れのフランス・パリへ語学留学のために渡った。
その時、私は18歳になったばかりで、彼もまた20歳になって間も無かった。
フランス・パリ。
8月。
文化や風習、食事にテーブルマナー。
馴れない異国での生活の不安と困惑。
言葉の壁のストレスとホームシック。
それらをなんとか乗り越え、パリでの生活にようやくなじんで来た頃だった。
言葉も少しずつではあったけれど上達し始めた頃でもあった。
私はパリでも比較的治安の良い、パリの中心部を流れるセーヌ川を挟んだ左岸(南側)のカルチェ・ラタンの学生アパートに住んでいた。
パリ、6区。
そこは、教養のある学生が集まる地区で、ルームメイトのジョゼットという同い年の女子大学生とルームシェアをしていたのだ。
ジョゼットはプロヴァンス出身のフランス人で、美人なのに気取らず茶目っ気たっぷりで無邪気な、しっかり者の女の子だった。
色白の肌に少しかげり気味の翡翠色の瞳がたまらなく印象的だった。
あるいは、主なる神の被造物でありながら高慢や嫉妬がために神に反逆し、罰せられて天界を追放された天使。
堕天使。
彼は自らのその手を汚し、汚れたその手で自らの首を絞める、堕天使。
私には、そんなふうに見えた。
彼がどんどん変わっていくのを、私は見ていられなかった。
生きる事にさえ恨みつらみを抱いているような、そういう凍てついた目つきをするようになっていく彼を見ていられなかった。
「ねえ、華穂。君も僕を憐れだと思うかい」
己の手で己の心を切り刻んで、わざと傷を負って生きているようにしか思えなかった。
それでも。
例え、世界中を敵に回したとしても。
「……どうして、自分で自分を傷付けないと生きて行けないの……煌」
それでも。
わたしにとって、彼は、宇宙にたったひとりのかけがえのない、煌めきだった。
鷹司 煌。
彼と出逢ったのは、今から7年前の夏だった。
高校を卒業したその年の4月に、私は憧れのフランス・パリへ語学留学のために渡った。
その時、私は18歳になったばかりで、彼もまた20歳になって間も無かった。
フランス・パリ。
8月。
文化や風習、食事にテーブルマナー。
馴れない異国での生活の不安と困惑。
言葉の壁のストレスとホームシック。
それらをなんとか乗り越え、パリでの生活にようやくなじんで来た頃だった。
言葉も少しずつではあったけれど上達し始めた頃でもあった。
私はパリでも比較的治安の良い、パリの中心部を流れるセーヌ川を挟んだ左岸(南側)のカルチェ・ラタンの学生アパートに住んでいた。
パリ、6区。
そこは、教養のある学生が集まる地区で、ルームメイトのジョゼットという同い年の女子大学生とルームシェアをしていたのだ。
ジョゼットはプロヴァンス出身のフランス人で、美人なのに気取らず茶目っ気たっぷりで無邪気な、しっかり者の女の子だった。
色白の肌に少しかげり気味の翡翠色の瞳がたまらなく印象的だった。



