月の女神アルテミスは、オリオンのことが大好きでした。


アルテミスは、オリオンに恋をしていたのです。


私は静かに目を閉じた。


ハルの声に耳を傾けながら、穏やかで深い眠りに堕ちていったのは、真夜中に小雪がちらつく、冬の星座が瞬く幻想的な夜だった。


目を閉じる直前に見たアルテミスは、トパーズのように艶やかな色をしていた。


アルテミスは強い女性ね。


だって、大好きなオリオンを失っても、こんなに美しく輝けるんだもの。


私には、到底無理だわ。


例えば。


ハルが居なくなったら、きっと。


私は硝子のように割れて砕けてしまうもの。


明確な理由は分からないけれど、今、ハルという存在を失ってしまったら。


私は硝子のように砕けて、粉々に砕けて散って、もう二度と元には戻れないのでしょうね。


だから、私はハルの手をしっかり握りしめて、眠りに堕ちていった。


「アルテミスは、オリオンに、恋をしていたのです」


私は、何も気付いていなかった。


数日後、この身に起ころうとしている出来事など、知る由もなかった。







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From 小嶺 華穂
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夜分遅くにごめんなさい。

近いうち、食事どうかと思って。

例の移動の事は勿論、ひとつ、聞きたい事があるの。

都合の良い日を教えてくれない?

たまにはふたりで飲みに行きましょうよ。







思いがけない事はいつだって突然で。


何の前触れもなく、唐突で。


だけど、身に起こる出来事たちは、きっと、必然で。


“ハル”を知る日は、突然、やってきた。