「……ひとりで過ごす夜はもう……嫌だと、思ったからよ」


マンション街の上空にぽかりと浮かんでいたのは、乳白色のフルムーンだった。


「それなら、ハルはなぜ、私について来たの?」


「……分からないんだ」


群青色の夜空から降って来るそれが雪なのか星なのか、良く分からなくなりかけていた。


「ただ……信じられる人だと、思ったんだ」


「……え?」


「東子さんは、信じられる人だと思ったんだ」


ハルの肩越しに、冬のフルムーンが見える。