Hamal -夜明け前のゆくえ-



「はあ……」


4日ぶりに来た祠稀の『家』はいつ見ても廃墟ビルだ。


砂と埃のせいか、階段を上る足音は室内を歩くそれと異なる。


……今日も先に来てるのかな。


来る前に、いる?ってメールをすればよかった。


実際あの日は威光の話を出してから、ろくな会話もしないまま別れたわけで。ちょっと気まずいなって思ってるわけで。


4日ぶりに会う祠稀に対して、どんな状態で話しかければいいのかって、ずっと考えていた――のに。


その全てが吹っ飛ぶほど、目に入った異常は心胆を寒からしめる。



足元から。背後から。正面から。頭上から。


恐怖という恐怖が僕を飲み込もうと襲いかかり、強迫観念にとらわれてしまう。


「……っう、ぁ…」


声にならない叫びが漏れ、バネが弾かれたように祠稀が振り返る。


伸ばしっぱなしの髪。顔を隠すように伸ばされたそれは今日も、左目と口元からしか表情を窺えないようになっている。


でも祠稀の瞳はいつも冷静さを帯びていて、口元はよくほころぶようにできている。