Hamal -夜明け前のゆくえ-



中華飯店の裏に祠稀の『家』があるといえど直結する道があるわけではないので、ぐるりと迂回しなければならない。


10分とかからないのだが、祠稀は面倒で仕方がないらしい。


僕は半歩うしろを付いて歩きながら、祠稀に問いかけようか否か迷っていた。


そのうちに『家』へ着き、3階の一室に入るなり「食後の運動」と蹴りの練習が始まってしまったから、余計に聞きづらくなった。



祠稀がこの街に出入りする理由は知らない。


どうして“戻らない日”があるのかも。


僕だって毎日来れるわけじゃないし、なにか事情があるんだろうと思う。


でも祠稀がこのビルを『家』と言うように、このビルを“拠点”にしてるということはわかっていた。


初めて会ったとき、子供だと見てわかる僕らをキャッチしてきた男に対して、祠稀は悪態をついていた。


祠稀はあの歓楽街が好きじゃない。


それなのにわざわざ出入りするだろうか。歓楽街にほど近いこのビルを『家』に選ぶだろうか。


僕は祠稀に会うためだけに、祠稀がいるからこの街に来ているけれど、祠稀は違う。ここに留まる理由がある。


知らないことが多すぎるから、こうして頭を働かすことしかできない。