Hamal -夜明け前のゆくえ-



どうやら顔馴染みらしい。来店するなり「白米」と注文してから席に座っただけのことはある。


……白米?


「もしかして、その餃子頼んだのって祠稀?」


小皿に醤油やラー油を垂らしている祠稀は「はあ?」と訝しむ。


だって餃子を食べる気満々なのは一目瞭然だし。


「頼んでねえけど……まあ今から行くからって連絡してたし、大概いつも肉類食ってるから――だろ?」


祠稀の目線を追うと、店員が中盛りの白米を持って現れた。そして、


「コイツ飯でもなんでも待たされるの嫌いなんだよ。ほら、堪え性ないから」


と、意地悪い口調に笑みを乗せた。


「盗み聞きしてんじゃねーよ! 仕事しろ仕事っ」

「はいはいすいませんでしたー」


けらけら笑う店員の背中に「うぜぇ」なんて悪態をつく祠稀は、どう見ても常連だと窺われる。


ふーん……。


「なんだよ」

「祠稀って持ち帰り弁当しか食べないイメージ」

「うるせえ場所が嫌いなんだよ。ファミレスとかぜってー行かねえ」


あ。それわかる。


「お前は公園のベンチで下向きながら、もそもそ食ってるイメージ」

「なっ……!」


過剰に反応しておきながら否定も肯定もしない僕に祠稀は吹き出し、箸を持った手で口元を隠しながらくつくつと笑う。


そんな祠稀を見たら言い返す気にもなれなくて、だけどなんだか悔しいから、餃子を3つ奪ってやった。