Hamal -夜明け前のゆくえ-



「え……ぎょ、……え?」


餃子なんか頼んでない。


顔を上げると店員は「熱いうちにどぉぞー!」とすでに踵を返したあとだった。



「びびったー」


斜め後ろから聞こえた声に心の中で同意しながら、この餃子はどうすればいいのかと眉を顰めた。


そして数分後、注文していなかった餃子が“妨害”であったと知る。



「先輩とやらに気をつけろと言われたんなら、人前で出していい話題なのか、考えてから口にしたほうがいいんじゃないかい」


僕の斜め後ろに座っていた男ふたりが、会計中のときだった。


「自分にとっては他人でも、相手が同じように思ってるとは限らねえぞ?」


厨房に立っていた店主がカウンターに身を乗り出して、忠告したのだ。


男ふたりは顔を見合わせてから軽く会釈すると、そそくさと店を出ていった。


様子を窺っていた僕は店主がこちらを見た瞬間、慌てて背を向けた。


なにもかも理解することはできなかったけど、この街には自分の知らない部分が幾つもあるのだという、漠然とした不安だけが残った。


だからだと思う。ほぼ男たちとすれ違いでやって来た祠稀が、僕を見て怪訝な顔をしたのは。


「なに呆けた顔してんだ」

「別に……祠稀が遅いから」

「ああ? 1時間も待ってねえだろ。堪え性のねえ奴だな」


向かい側に座った祠稀は平然と煙草に火をつけ、水を持ってきた店員に「どーも」なんて声までかけている。