Hamal -夜明け前のゆくえ-





裕福でも貧乏でもない我が家は、毎日外へ飲みに行くほどの余裕があるわけじゃない。


だから1週間もすれば僕の日常はあっさりと戻ってきた。


朝を迎えれば、ふたりはいつものように『ごめんな』と『壱佳』を繰り返す。


愛している風を装うため事務的に繰り返されるそれが、つらくないと言ったら嘘になる。


だけどひどく寂しさを感じなくなったのは本当で、耐えることができたのは、一刻も早く達成したい目的があったからだと思う。



「いっ……つ……」


目が覚めたと自覚したのは痛んだ体に身をよじったあとで、頭がはっきりしたのは暗闇に目が慣れてからだった。


また途中で気を失ったのか。そのまま眠りこけたと言ってもいいけど……よかった、無理やり起こされなくて。



さすがに意識のない人間を殴り続けることはないが、今日の義父はひどく、まさに当たり散らすという感じだった。


その被害状況も凄まじいもので、僕に至っては防御率の高い顔面に2発も食らわせられたほど。



横たわっていた体を起き上がらせ、口の端を触ると少しざらつく感触を指の腹に覚えた。


居間は暗く、外もしんと静寂を保っている。


ふたりは寝たんだろうとか、何時だろうとか、顔を洗うついでに冷たいシャワーを浴びたいとか。


色々思いながらも、携帯と千円札がポケットに入っていることを確認した僕は、足音を忍ばせて家を出た。