情けない。


情けない。


そうだ僕が、いつも情けないと思うのは。保健医に傷を見られたとき堪らなく怖くなったのは。


現状を把握しているつもりで、闇雲に逃げているだけの自分が恥ずかしかったからだ。



どうして。もういやだ。そう思いながら義父にも母さんにもされるがままで、取って付けたような謝罪と賄賂で治められてしまう自分が。


痛いと、やめてと、死にたいと思いながら生にしがみ付くくせに、助けてと言えない自分が。


弱くて、情けなくて、恥ずかしかった。


そんな自分を誰にも見せたくなくて、見せないことが強さになるかもしれないなんて夢を描いていた。


なにが強さなのかわからないけど。


どうしたら強くなれるのかだってわからないけど。


ここから這い上がれるだけの強さくらいは欲しいと、心の底から思った。



「――祠稀っ……」


嗚咽に交じったそれは無意識で、泣き伏せながら今なにを口走ったのか理解するまで数十秒かかった。


「……祠稀、」


再度口にすると落涙したが、涙に沈むことはない。


ずっと鼻をすすり体を起こすと頭がぼうっとして、熱を持った瞼が重かった。