「今日は外で飲みましょう」
学校を休み1日中部屋に閉じこもって勉強をしていたはずの僕は、母さんの声で目を覚ます。
寝惚け目に映る、わずかに開いている襖。そこから母さんが部屋を覗き、義父が帰宅しているのだと理解した。
「……大丈夫よ。壱佳はもう中学2年生だもの」
ぼそぼそ話す母さんのそれを耳にしながら、机にうつ伏せ再び目を閉じる。
「なにも心配することないわよ。年頃の息子と、取っ組み合いの喧嘩をすることなんてめずらしくないじゃない」
――……、え?
「ね? ほら、行きましょう。久々に外で飲めば気晴らしにもなるでしょう?」
目を開けて動けずにいると、ふたり分の足音が玄関の向こう側へ消えた。
衝撃が走ったはずの僕は上半身を起こして、しばらく目の前にあるノートを眺めながら頭を働かせていた。
時間にして数分のことだったかもしれない。けれど体感的にはとても長く、だからこそ自分はこんなにも冷静なのだと思った。
……そういうことか。
なんて思えるくらいには落ち着いていた。
やっぱり保健医が僕の額の傷を見てなにか思ったんだろう。
所属してないから部活で怪我をしたとは思わないだろうし、家庭の事情だってある程度は学校側に伝わっている。



