その行動には僕へ対する心配は微塵も含まれていないということを、よく知っていた。
だから母さんが「ちょっと熱あるね」と言っても驚きはしなかったし、すでに用意されていた冷却シートを額に貼られても、二の句が継げないだけだった。
「誰か来ても出ちゃ――……ううん。風邪だって言えるわよね?」
黙る僕の両手を、白くて綺麗な手が包み込む。
おもむろに上げた視線は母さんの目がすぐに捉え、からめとるようなそれが胸を衝く。
「言ってすぐ帰ってもらうのよ? ね、壱佳。できるわよね?」
母さんの目に僕は映っていないんだろう。
僕がどんな思いで、どんな風に生きているかなんて、なにひとつ見えていない。
それなのに僕だけが……僕ばかり、母さんのことをよく見ている。
その心情さえ予想できる僕のそれが、見当違いでありますようにと願えたらよかった。
きっと違う。そんなはずない。そう思わせてほしかった。
だけどもう、たくさんだ。
「わかった」
無意識に力を込めていたのであろう母さんの手がゆるむ。そして次の行動は、
「ねえ……壱佳。欲しいものある?」
予想通りだった。少しも外れない自分の予想が恨めしいくらいだった。



