Hamal -夜明け前のゆくえ-



家に帰ったら洗濯しないと。


少し勉強もして、今日は、どうしようかな……。


どうなるかの間違いかと思い直し、ドライヤーの温風を髪に当て続ける。


びしょびしょになるまで濡らしたわけではないので髪はすぐに乾き、ワイシャツにも熱を与えた。


やがて「おーい」と声が聞こえ、ドライヤーの電源を切る。シャッと空気を切り裂くような音と一緒に保健医が顔を出す。


「紙袋しかなかったけど、いいよな? パーカー入れといたぞ」

「……あ。はい。ありがとうございます」


紙袋を受け取ると、もう帰ろうかなという気持ちが芽生えた。


コンセントからプラグを引っこ抜き、使ったタオルとドライヤーを手に顔を上げる――と。


「……っ、」


咄嗟に指で前髪を梳いた僕の目を、保健医がゆっくりと捉える。それは保健医が僕と目を合わせる前に、別の部分を見ていたという証拠だった。


どっ、どっ、と心臓が早鐘を打つ。


保健医はちらりと僕の肩周りに目をやってから、再び僕を見た。


「これ」


体を強張らせた僕の恐怖は、保健医が差し出したものに少なからずゆるんだ。


「除菌消臭スプレーなんだけど、使うか? 大して臭わないけどな。気になるならと思って」

「あ……いえ、大丈夫です」

「そうか。じゃあ、」

「はい。これ……ありがとうございました」

「どういたしまして」