「ここにいるんだと、代わりなんかいないんだと、認めてほしいなら声を出せばいいだろ」
「……」
「お前は自分を何様だと思ってんだ。雨が降る真昼、街の真ん中に身ひとつで突っ立ってみろよ。どれだけの人間が声をかけて傘を貸してくれる。通り過ぎる奴がほとんどだろ。数秒後には忘れてんよ。その程度の人間なんだよ、お前は」
雨に打たれる自分を想像して、その通りだと思った。
だけどそんなの、僕だけじゃなく他の人だって――…。
「待つんじゃねえ。言わなくても気付いてもらえるだの、誰かに見つけてもらえるだの、他人任せにする前に自力で1歩踏み出せよ。自分の願いを他人に委ねる奴が、不満を漏らすな」
祠稀は言ったあと、自身の襟元にループタイを結び直す。
……僕は駄々をこねてるだけだっていうの?
待たないで主張するなんて、口で言うほど簡単じゃないよ。
伝わらない、届かないことを知っているだけに、困難はひとしおなのに……。
それでも祠稀なら、やってのけるんだろうね。
止まってはくれない時間の流れに置いていかれないように、意思を持って先へ、先へ、進んでいく。
ただうずくまっている僕なんか、あっという間に追い抜いてしまうスピードで。